現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
急に熱く語り出したヴェネディクトに困惑しているのにも気付かないのだろう。なおも話続けようとした時、大きな咳払いがそれを遮った。

「ゴホンッ。商売の話を食事中にするのはマナー違反だそ、ヴェネディクト」

「ーーーすいません」

その音でハッと我に帰ったヴェネディクトが恥ずかしそうにグレースを見た。

「いいのよ」

「ヴェネディクトはまだまだ青いな。どうかね、グレース。この若造がレディング伯爵邸で粗相をしないように付き添って行ってやってはくれんかね?」

「でも……。え、でも……あれ?」

公爵に返事をしようとして、グレースはある事に思い至った。

ここでのグレースはヴェネディクトの婚約者だ。
婚約者の女性と一緒にいるのに、何故グランサム公爵は他の令嬢のお茶会に行けとヴェネディクトに諭したのだろう?それは婚約者であるグレースに失礼な話じゃないか?いや、その前に令嬢からの誘いに婚約者と行こうとしてるヴェネディクトはどんなつもりなんだろうか?

なにもかも、どこかおかしい。
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