現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
だが、目の前の男性はグレースが「はい」と頷かなければ先を話すつもりはないと言外に言っているも等しい。この厄介な人に言い勝つのが容易いことではないのはもう分かっているし、何より面倒で仕方ない。
グレースは大きな溜め息と共に小さく頷いた。

「ありがとう、グレース。では話すけれど、イーディスの婿にヴェネディクトをと望むレディング伯爵と僕にとって君が邪魔なのは事実だ。あの時、はっきりとは言葉にしなかったが彼が君と婚約を予定しているのは分かったからね。だから僕は君について調べたんだ、グレース」

「探偵を雇って?」

「こういう調査では評判の奴だよ。君にとってはあまり気分の良い話じゃなくて申し訳ない。でも僕は、君の欠点を見つけてヴェネディクトの目を覚まさせようと必死だったのさ。目が覚めればきっと、イーディスの素晴らしさに気付いてくれるってね」

申し訳ないと伏せた視線とイーディスを素晴らしいと言い切る断固たる意志に、グレースは小さく微笑んだ。

この人はきっと私を傷つけたいわけじゃない。ただ、イーディス嬢が大切なだけなのだ。

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