現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「目的を果たすついで……?」

男二人の会話の勢いとピリピリと張り詰めた空気が怖くて口を挟めずにいたグレースだったがヴェネディクトの言葉に引っかかりを覚えた。

「あの、それはイーディス嬢とヴェネディクトの結婚のこと、かしら?」

カーライル子爵との会話を思えばそう考えるのが普通だが、そうじゃない気がしたのだ。

「……まぁ、大きな意味ではそうかな」

疑問に答えながら、ヴェネディクトがグレースの隣に座った。そのまま、当然のように腿の上でぎゅっと握られていたグレースの手を包み込むように握る。

「カーライル子爵はね、君にいくつか言ってない事があるんだ。それを聞けば、状況は君が思っているのと随分違うと分かるだろう。本当はグレースにはもっとゆっくり、ひとつずつ説明していくつもりだったんだけどね。ここで君が間違った決断をしてしまわないように話そうと思う。大丈夫かな?」

グレースを心から気遣いながら話してくれているのは、その心配げな視線からも優しい口調からもよく分かる。何よりこれまでずっと自分を守ってきてくれたヴェネディクトをグレースは疑う事なんてしない。

「ええ、いいわ。話して」

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