シャボン玉の君に触れる日まで
「見るだけでも無理?進学のために学校説明会に行きたいって、未来を見据えた子供の姿を見たら、お母さんも許してくれるかもしれない。
それでもダメなら…私がサッカー部員連れてこよっか!」
張り切ったエリに笑ってしまった。
「病院にサッカー部員連れてきてどうすんだよ」
死ぬとわかってから初めて笑った。
なぜかそれは止まらなくて、ずっと腹筋が震えている。
エリにも伝染ったようで、二人で一緒に笑った。
「…頼んでみる。体自体は何ともないはずだし。……ありがとう、エリ。あと、さっきはごめん」
「ううん、いいの。私もごめんね。本当に辛いのは聖夜くんなのに…。許可もらったらユカちゃんに伝えてね。私も詳細を調べてユカちゃんに言ってもらうようにするから」
わかった、と言うとエリは静かに病室から出て行った。
こんなに笑って、こんなに温かい涙を流したのはいつぶりだろう。
残されたハンカチは、また会おうという約束のチケットのようだった。
そして、なぜかエリのいない病室は、ひどく寂しく感じた。