シャボン玉の君に触れる日まで

「え〜皆さん。本日は寒い中、学校説明会にお越しいただき、ありがとうございます。本校は、勉学と部活動の両立に励んでおりまして…」

誰だか知らないおじさんが、淡々とマイクを通して言葉を述べた。

後ろの大きなスクリーンに、生徒達の写真が映る。

校舎内の設備や授業の様子、アドミッションポリシーや受験においての必要事項を説明された。


終わりに近づき、ボランティアや部活動の実績が表示された。そこにびっしりと並ぶのは、サッカー部と水泳部。

「本校は、サッカー部と水泳部が主に大きな実績を残しておりまして、コーチや指導者の配属にも力を入れております」

エリの言う通り、サッカーは強いようだ。胸の奥で、懐かしい気持ちが浮かび上がる。

もしもこの学校に入れたら、強くなれるかもしれない。勝てるかもしれない。

…強くなりたい。

足に力がこもる。

以前のような筋肉は、すっかり減っていたが、自分が勝利を手にする瞬間を想像した。


────いいな。

そっと頭に触れてみる。

痛みはない。

それでも中身は壊れているそうだ。

『実際いつ死ぬかなんてわからないよね』

エリの声が、背中を押してきた。

この学校に入りたい、そう未来に願うことはいけないことなのだろうか。

いつか、そんなこと願わなければよかったと後悔するのだろうか。
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