シャボン玉の君に触れる日まで
外に出ると、エリが心配そうな表情で待っていた。
「聖夜くん、体調悪くない?大丈夫?汗かいたでしょ、寒くない?」
「多分大丈夫。寒そうなのはエリのほうだと思うけど。ブレザーも着てねぇし」
「…私は寒くないよ」
暑がりなのか、気を遣っているのか、そんなことより俺が心配なのかわからないけれど、エリは顔を背けて歩き出す。
「…帰ろっか。うん、病院に戻った方がいい。私、荷物取ってくるね」
彼女は教室に向かって走り出そうとした。
だが、横から駆けてきた見覚えのある人に、腕をがっちり掴まれる。
「やーっと見つけた!ねぇ〜藤咲のエリさ〜ん?もう部活始まってますがぁ、どこに行くおつもりで〜?」
笑顔の圧を見せたのは、確かさっき大きな看板を持っていた部長さんだった。
体操服に着替えているから、すぐにはわからなかった。
そういえば、エリは何の部活に入っているのだろう。
『今日こそ部活来てよ』と言われていたから、幽霊部員なのかもしれない。
うん、あの避けようを見る限りそうだ。
エリはさっきの微妙な表情とは一変して、少々焦りを見せる。
「んーとね…病院に行くから、今日はもう帰らないといけないの〜」
するりと腕をぬこうとしたエリだが、グイッと引き戻されていた。
そしてその顔は、こちらを見る。
「君も、エリが泳いでる姿見たいよね!」
「え?」
「ほら見たいって!さ、行くよ」
エリは「ええ〜」と言いながら、渋々歩いて行った。
俺も、見たいとは言っていないが、ついて行った方が良さそうなので、そろそろと二人の後ろを進む。