シャボン玉の君に触れる日まで
シャボン玉

古い二両編成の電車に乗り込んだ。

冬はやはり、日が暮れるのが早い。

もうすっかり傾いていたそれは、真っ赤な光を窓から射し込み、俺たちを照らす。

たった二駅の距離なのに、外の景色は病院に近づくにつれ、建物が減り、草木が増えてきた。

遠くの方に、きらきらと輝かしい光を反射した湖が見える。

「今日、どうだった?楽しかった?」

眩しい赤色の世界を見つめながら、隣の彼女が聞いてきた。

「…楽しかった。疲れたのに、運動するなって言われたのに、やってしまったと思ったのに……後悔してない」

エリは「そっか」と嬉しそうに微笑んだ。

「あ、そういえば…これ」

俺は鞄の中から丁寧に畳まれたハンカチを取り出した。

「忘れてた!洗濯してくれたんだ、ありがとう」

ハンカチをエリに渡す。

その際、指先と指先が触れた。

俺は咄嗟に手を引っ込める。

彼女の手は、サラサラとして柔らかかった。

「ねえ…最後に付き合ってくれない?」

「え?」
< 28 / 52 >

この作品をシェア

pagetop