シャボン玉の君に触れる日まで
シャボン玉
古い二両編成の電車に乗り込んだ。
冬はやはり、日が暮れるのが早い。
もうすっかり傾いていたそれは、真っ赤な光を窓から射し込み、俺たちを照らす。
たった二駅の距離なのに、外の景色は病院に近づくにつれ、建物が減り、草木が増えてきた。
遠くの方に、きらきらと輝かしい光を反射した湖が見える。
「今日、どうだった?楽しかった?」
眩しい赤色の世界を見つめながら、隣の彼女が聞いてきた。
「…楽しかった。疲れたのに、運動するなって言われたのに、やってしまったと思ったのに……後悔してない」
エリは「そっか」と嬉しそうに微笑んだ。
「あ、そういえば…これ」
俺は鞄の中から丁寧に畳まれたハンカチを取り出した。
「忘れてた!洗濯してくれたんだ、ありがとう」
ハンカチをエリに渡す。
その際、指先と指先が触れた。
俺は咄嗟に手を引っ込める。
彼女の手は、サラサラとして柔らかかった。
「ねえ…最後に付き合ってくれない?」
「え?」