シャボン玉の君に触れる日まで

…綺麗だな。

体がふわりと浮きながら、単純にそう思った。

……苦しい。息ができなくて苦しい。

最後の泡が輝きながら水面へと上っていく。

でも、こんな苦しみすぐに終わる。

体は酸素を欲しがって、暴れた。勝手に顔が宙を向く。でも決して与えない。

それでも俺はもがいていた。だけどもう、手を伸ばしても水面には届かなくて。

閉じかかる目で、届かない光を見つめた。

俺は後悔してるのか?決心したくせに。

いやそんなことない。もうすぐ望み通りになる。俺はもう、思い残すことなんて……。



───思い残すことなんて?



すると突然強い力が働いた。

グイッと引っ張られるような衝動に、ついに魂が抜ける瞬間が来たかと、目を開けてみる。

体が浮いた。

宙には満天の星と、雲ひとつない空で大きく光を放つ満月もあった。

そんな幻想的な景色を長く見つめた気がしたが、ドサッという衝撃音とともに、体が何かに打ち付けられる。

『え?』と声を出そうとした次の瞬間、物凄い鼻の痛みと吐き気が俺を襲った。

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