シャボン玉の君に触れる日まで
『ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…』
リズムよく刻まれた機械音が耳に入る。
空気が無理やり入り込んできて苦しい。
頭がぼんやりとして、何が起こったのかわからなかった。
窓の外は真っ暗なのに、妙に明るい気がする。
ああ、もうすぐ死ぬのかな。
そう思った瞬間、さっきの情景が脳裏に浮かんだ。
泣き叫ぶ母、倒れ込むエリ。暗闇に残された自分。
夢だったのか?
鉛のように重い体を、少しだけ起こして触れてみた。
胸に手を当て、息を吸い込む。
横にある心電図の通り、俺の心臓はしかと血液を送り出していた。
生きていた。何も言えずに死ぬところだった。
その事にたまらなく恐怖を感じて、身を震わせる。
でも、妙に明るい空が何を示しているか、俺は何となくわかっていたんだ。
─────時間がない。
夜空の星々に、本当に吸い込まれてしまう前に。
俺はしなければならないことがある。