シャボン玉の君に触れる日まで
浅く揺れる湖に、白い月がひとつ浮かんでいるのが見えた。
何も変わらぬ音と匂い。
なのに景色だけは、青いスポットライトがあたっているように明るく見える。
俺を追いかけてくる音はしない。
そして、俺の求める人も、そこにはいなかった。
ガクンと膝が地につく。必死に息を整えた。
「やっぱ…いない、か…」
自分の行動が馬鹿みたいに思えて笑い、空を見上げた。
風にのった雲は、とても速い。
時の流れと同じだ。その雲は、夜を照らす月を綺麗に覆い隠す。
湖も、砂浜も、真っ暗になった。