シャボン玉の君に触れる日まで
そう言うと、エリは一瞬間を置いて、素早く俺から離れた。
愕然と自分の足元を眺める。
キラキラと輝いて、美しかった。
「…ごめん…びっくりしたよね」
不思議と怖くなかった。
そうだ。よくよく考えてみれば、初めからおかしなことばかりだった。
どうして真夜中に湖にいたのか。
どうして、水を含んでいつも以上に重くなった男の体を、簡単に湖から引き上げることができたのか。
どうして真冬にもかかわらず、白い腕が見えたのか。
どうして練習もしていないのに、美しく速い泳ぎができるのか。
「人魚…だから?」