シャボン玉の君に触れる日まで
「聖夜くんが、大切だから」
微笑む彼女は、幸せそうだった。
足先にあたる部分は、もう消えてきている。
「これを、持っていて欲しい。記憶がなくなっても、きっとこの花を見て、その意味を思い出して…」
彼女は俺の手を持って、その中に髪飾りを握らせた。
小さな紫色の花がたくさんついている、藤の髪飾り。
「出会った時に私、言ったよね?『人は誰かに生かされてる』って。
たとえそれが、どんなに辛い人生だろうと、生きていればどんな風にでも変えることができる。
だって、聖夜くんの人生なんだから。
生きていることに、大きな価値があるんだから。
だからもう、二度と命を絶とうとしないで。
生きることを諦めないで。
あなたは私に生かされてるの。
皆も誰かに生かされてるの。
そのことだけは、覚えていて…。
与えられた命が、最期の瞬間を迎えるまで」
俺は…エリに生かされている。
人は誰かに生かされている。
誰かが生かしてくれているから、自分という存在が今ここにあるんだ。