シャボン玉の君に触れる日まで

「馬鹿…本当馬鹿だよエリは…」

そんなことされて、俺が本当に喜んで生きると思ってるのか。

生きることを諦めるなと言うのなら、そっくりそのまま返してやろうと思った。

だけど、エリには本当に適わない。


「私は、生きることを諦めたわけじゃないよ。
やっと…誰かを救うことができて、幸せだよ。
だから、笑って?これからも生きると誓って?
それから……だいすきって…」


もう声が出せないようだった。

シャボン玉はどんどん数を増して、天に上る。

上げたくもない口角を、エリのために死ぬ気で上げた。

「…生きるよ。生きるに決まってるじゃないか。
エリが生きてたこと、エリがくれたもの、絶対に忘れない。
俺の中で生かして、いつかエリに触れる日まで…ずっとずっと生きてやるから!大好きだから…!!」


エリはゆっくりと微笑むと、最後に落ちた一筋の涙が、月の光に照らされながら、どこまでも高い空へ飛んでいく。


遠く、小さくなる彼女を見て、我慢していた涙が溢れた。


二人で一緒に生きたかった。

二人で一緒に過ごしたかった。

二人で一緒に、大人になりたかった。

背後から、眩しい朝の光が昇ってくる。

手元に残されたのは、明るく照らされた髪飾り。

それを自分の中に植え付けるように、強く抱き締めた。





< 47 / 52 >

この作品をシェア

pagetop