シャボン玉の君に触れる日まで
「うーん。誰だったかな…?忘れたけど、なんか残ってる」
暖かくて、どこか寂しいこの言葉。
きっと、忘れたくても忘れられないだろう。
俺は、鞄についたちりめん紐の藤を見つめた。
『決して離れない』
そんな意味があった気がする。
いつの間にか、俺の元にあった。
髪飾りなんて使わないくせに、どうしても捨てられなくて、紐を付け替えキーホルダーにしたのだ。
駐車場で車に荷物を乗せる。
すると、垣根の向こうから、ひょこっと顔が現れた。
「あ、グッドタイミング!退院と合格おめでとー!水泳部入るの楽しみにしてるね〜!この前はわざわざ一人で見に来てくれたもんね〜」
「はあ?聖夜はサッカーだろ。俺がみっちり鍛えてやるよ」
学校説明会の時に出会った、水泳部部長のはる先輩と緑川先輩だった。
水泳なんて全く興味がないのに、どうして行ったのだろう。
はる先輩はいい人だけど、面倒臭いから、絡むようになったことを少し後悔した。