桜の下で会いましょう
第1章 左大臣家の双子
左大臣・藤原照明には、世にも珍しき双子の兄妹がいた。


兄・藤原咲哉は、世の女性を虜にする程の美少年。

父である左大臣の補佐をする中納言を務め、文武両道と謳われた。

元服と同時に婚姻した妻は、これまた美しい、右大臣の一の姫君・桃花。

未だ子供は無くても、この世をときめく若者であった。


そして妹・依楼葉(イロハ)は、かぐや姫と噂される程の美少女。

殿方の求婚は数多あるも、なかなか決まらない。

そこも、かぐや姫と言われる由縁であったが、依楼葉は少し、周りの姫君と違っていた。


位の高い姫君らしく、和歌や琴にも精通していたのだが……










双子の兄・咲哉を真似てか、

平安の時代の姫君らしからぬ、漢詩がお好きであった。
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