桜の下で会いましょう
「あっ、いや……その……我が息子の春の中納言は、病み上がりでして……」

父・藤原照明の額から、嫌な汗が出る。

「なんの。我が息子夏の右大将は、春の中納言殿と冬の左大将殿に比べて、少し歳が上でございます。お上も、若くて美しい公達の方が、宜しいでしょう。」

「……そうよのう。」

帝は、ニヤッとした。

「夏の右大将も美しい公達だが、たまには若い者に、華を持たせてやりたい。」

帝にそう言われ、父・藤原照明は縮こまる。


「それに、ゆくゆくは春の中納言殿が、左右の大将、いづれかになるでしょうから、今のうちに肩慣らしでもしておいた方が、よかろうと思うのです。」

「えっ……そ、そうなのですか?」

そんな話まであるとは、父・藤原照明も想像はしていなかった。

「春の中納言が、勤めてくれるとなれば、私も楽しみだ。関白左大臣。」

そう言って帝は、笑顔になる。
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