桜の下で会いましょう
「ほう。」

春の中納言が、漢詩が好きだと言う事は、噂で聞いていたが、はっきり得意だと言うとは。

実は依楼葉。

咲哉が漢詩を習っている側で、面白半分で一緒に学んでいた。

咲哉も、漢詩は読めなくはなかったが、依楼葉には負けていたのだ。


「後は得意と言う訳ではありませんが、弓矢や笛も……」

そこまで言って依楼葉は、かぁーっと頬が熱くなった。

どれもこれも、男がやる物だ。


それに気づいた帝も、クククッと笑いを堪えていた。

「失礼しました。つい……」

こんな時に、女らしい事の一つもやってこなかった事に、少し後悔する依楼葉。

「よい。春の中納言は、中納言になるべくして、なったのだな。」

「はぁ、はい。」

恥ずかしがりながら返事をする依楼葉を見て、帝はまた可笑しそうに笑っている。

依楼葉は、心の中でため息をつきたかった。


「面白いものだ。」

帝は、笑い過ぎたのか、涙を拭いていた。
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