桜の下で会いましょう
「ご子息はお若いのに、しっかりとなさっている。凛々しい顔つきでもあるし、きっと周りが放っておかないでしょう。」

「そ、そうですか？」

そう言われて、父・藤原照明は改めて隼也を見た。

田舎者と言う思い込みがあるのか、今までそんな事も、思った事はなかった。

「何はともあれ、若いうちは失敗を恐れず、何でもやってみる事ですよ。」

頭中将・橘厚弘の優しい言葉に、父も隼也も心が温かくなった。


こうして宮中に出仕するようになった隼也は、メキメキと頭角を現していった。

出仕して、初の司召（諸官の任命）では、早速五位蔵人と言う殿上人となり、その半年後には咲哉と同じ、中納言の位にまで上りつめた。


隼也の魅力は、賢さと努力だけではなかった。

幼い頃から、母と二人暮らし、母が亡くなってからは、父の家に引き取られた事で、若いのにどこか寂しげな哀愁を、隼也は漂わせていた。

その事から隼也は、春の中納言に対し、秋の中納言と言われるようになった。
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