桜の下で会いましょう
「……具合は、如何だろう。また流行り病と、聞いたのだが……」

「は、はい……」

帝は、仮病を使っている事を知らない。

依楼葉は、咄嗟に咳き込み始めた。

「大事ないか?」

帝が、立ち上がろうとする。

「は、はい!もう、治まりました!」


依楼葉は、息を飲んだ。

下手な芝居をすると、御帳台を超えて来るのでは。

そんな恐ろしさを感じた。


「お、お上こそ……病が移ってはいけないと、他の方々の見舞いを全て断っていたのですが……」

「そうだったのか?お父上殿は、すんなり部屋に通してくれたが。」

依楼葉は、歯ぎしりしそうになった。

父上様、さては計ったな~と、怒りが一瞬こみあげた。


「元気そうで、何よりだ。」

依楼葉が帝を見ると、こちらを優しく見つめてくれている。

「髪も……伸びましたな。」

かぁーッと、依楼葉の顔は赤くなった。

女の成りなど、あの花見の祝宴以来だ。
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