桜の下で会いましょう
もちろん、藤原崇文が言っている相手は、依楼葉だとは思うが、亡くなった咲哉だって、皆に慕われていた。

数人の見舞いもあったが、突然逝ってしまったも、伝えられないままだった。


「ありがとう、左大将。」

父・照明は、藤原崇文の手をぎゅっと握った。

「そんな事を言ってくれるとは……咲哉も、あの世で喜んでいるだろう。」

「大叔父殿。」

そうやって二人は、一目もはばからず、一緒に泣いていた。


一方、密かに泣き崩れているのではと、心配していた桃花は、静かに手を合わせるばかり。

依楼葉は、そっと桃花に近づいた。

「大丈夫?」

「ええ……」

無表情で、ずっと床を見つめている。

連理の枝のように、仲が良かった咲哉と桃花。


依楼葉は、ずっと気になっていた事を、桃花に尋ねた。

「桃花殿は、咲哉が亡くなったら……本当は髪をおろしたかったんじゃないの?」

「そう、ですね。」
< 162 / 370 >

この作品をシェア

pagetop