桜の下で会いましょう

第10章 涙の再会

依楼葉が、桜子の女房を断って、一冬が過ぎた。

また桜の季節が訪れ、一人女房が足りない藤壺は、花見の祝宴の準備に困っていた。


そんな時、父・藤原照明は、桜子から直々に、藤壺に呼ばれた。

「関白左大臣殿。花見の祝宴なのだが、ぜひ今年も、そなたの姫君に手伝って貰いたい。」

父・藤原照明は、顔を上げられない。

この前、女房になる事を断った手前、手伝いまで断る事はできない。


しかも何度も何度も、宮中へと言っても、今度は依楼葉が何と言うか分からない。

「その……娘は今、体調を壊しておりまして……」

父・藤原照明は、苦し紛れに嘘をついた。

「やはりそうであったか。父から、女房を断られたと聞いた時、もしやそうではないかと、思っていたのだ。」

桜子は、女房を断った事も、今嘘をついた事も、いい方向に捉えてくれている。

父・藤原照明は、これはこのまま乗り切れると考えた。