桜の下で会いましょう
依楼葉が、綾子と一緒に立ち上がった時だ。


「そう言えば、帝にお見せする絵巻、決まりましたか?」

後ろから桜子の声がした。

「それが、何枚かは決まったのですが、残りの一枚がどうも、決まりませんでして……」

桜子の女房の一人は、慌てているようだ。

「どうしましょう。もう少しで、祝宴も始まると言うのに。」


綾子と依楼葉は、戸の影に座り、一部始終を聞いていた。

「どうやら、絵巻に書いてあるのが漢字のようで、何という意味なのか、分からぬのです。」

女房の一人が、桜子にその絵巻を見せていた。

「本当だわ。絵だけなら、女性のお話ように感じるけれども、相手の方が敵に囲まれているし……知らずに帝にお見せして、礼を欠いてしまったら、嫌だわ。」

桜子も、困っているようだ。


そんな時、綾子が依楼葉に、耳打ちをした。

「そう言えば、和歌の姫君は、漢詩が読めるのでしょう?」

「は、はい。一応は……」
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