桜の下で会いましょう
第12章 咄嗟の機転
さて、依楼葉は藤壺に出仕し、桜子と帝の仲睦まじい様子を見てしまったのだが、それに落ち込んでいるのは、依楼葉だけではなく、帝も一緒だった。
「……上、主上?」
「あっ、ああ……」
蔵人に呼びかけられ、ハッと我に返るが、蔵人は不思議な表情をしている。
「主上、何かございましたか?先ほどから、心ここにあらずでいらっしゃいます。」
「いや、何でもない。……すまなかった。」
五条帝はもう一度、文書に目を通した。
すると、隣の梅壺から、女の笑い声が聞こえてくる。
「何やら、楽しそうですね。どなたが笑っているのでしょう。」
この清涼殿にいる者には分からなくても、目を瞑れば分かる。
あれは、和歌の姫君の笑い声だ。
「主上。少し、休まれては。」
「ああ。そうさせてくれ。」
五条帝は、立ち上がると夜の御殿に、籠ってしまった。
横になり、また目を瞑ると、聞こえてくる。
愛しい人の笑い声が。
「……上、主上?」
「あっ、ああ……」
蔵人に呼びかけられ、ハッと我に返るが、蔵人は不思議な表情をしている。
「主上、何かございましたか?先ほどから、心ここにあらずでいらっしゃいます。」
「いや、何でもない。……すまなかった。」
五条帝はもう一度、文書に目を通した。
すると、隣の梅壺から、女の笑い声が聞こえてくる。
「何やら、楽しそうですね。どなたが笑っているのでしょう。」
この清涼殿にいる者には分からなくても、目を瞑れば分かる。
あれは、和歌の姫君の笑い声だ。
「主上。少し、休まれては。」
「ああ。そうさせてくれ。」
五条帝は、立ち上がると夜の御殿に、籠ってしまった。
横になり、また目を瞑ると、聞こえてくる。
愛しい人の笑い声が。