桜の下で会いましょう
「依楼葉。そなたは仮にも左大臣家の姫君なのですから、出仕などせずとも、今をときめく殿方が……」

「求婚しにきた殿方は、皆、我よりも弱い者ばかり。男とは、名ばかりの方だけではございましたな。」

そう言って依楼葉は、ニコニコと笑っている。

そこでもまた母である東の方は、ため息をつくのであった。


誰が付けたのか、世の者は依楼葉の事を、”かぐや姫”と裏で呼んでいた。

それは、求婚者が多い美しい姫と言う意味の上、無理難題を押し付け求婚者をことごとく断ってしまうと言う部分さえも、似ているからであった。

その、無理難題と言うのが……


「和歌の姫君様!」

「佐島!」

依楼葉は、左大臣家の使用人達に、”色は匂えど散りぬるを”が、名前と同じ”いろは”から始まる事から、和歌の姫君と言われていた。

当然の如く、幼い頃から仕えている佐島と言う男の使用人にも、そう呼ばれている。
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