桜の下で会いましょう
「父上……」

関白左大臣家の、久しぶりの再会を見て、右大臣家も橘厚弘も、皆笑顔になった。

「これで、秋の中納言殿の疑いも晴れましたね、お父上。」

橘厚弘は、父・橘文弘の顔を覗いた。

「ふん。」

橘文弘は太政大臣らしからず、扇を広げ自分の顔を隠した。


「ありがとう、さち。そなたのせいで、私は助かった。」

「あっ、いえ。私は何もしておりません。返って喉のつかえが降りた気が致しました。」

佐島は、さちの背中を摩ってやった。

「若様。どうか、姉君様にお礼を。」

「姉君に?」

「私をここに連れて下さったのは、尚侍様です。」

隼也が内裏の中を覗くと、笑っている依楼葉を見つけた。

「姉君……」


そして依楼葉は、横にいる帝と目を合わせた。

「よくやった。」

「いえ、帝のおかげでございます。」

二人は、誰にも分からぬように、微笑み合った。


一方、またもや邪魔をされた橘文弘の怒りは、沸々と込み上げていくのだった。
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