桜の下で会いましょう
第17章 呪いの護符
しばらくして、若い公家による歌会が、催された。

隼矢は無事、関白左大臣家の息子として、堂々と出席する事になった。


そして催された歌会のお題は、この季節に相応しく秋だった。

「では、秋と言えば秋の中納言殿、如何かな。」

隼也は秋が訪れた事を詠んだ。


木の間より もりくる月のかげ見れば
心づくしの 秋は来にけり
(木々の間から漏れて来る月の光を見ると、心を使い果たす秋はとうとうやって来たのだなあ。)


「おお。さすがは関白左大臣殿の息子。情緒的ですなぁ。」

皆、隼也の歌を誉めた。

「なあに。歌会には、恋の歌が付き物よ。」

次は、冬の左大将・藤原崇文が詠んだ。


君しのぶ草に やつるる古里は
まつ虫の音ねぞ かなしかりける
(君を偲ぶという名のしのぶ草が生えて荒れた古里は、待つという名を持つ松虫の声が悲しいのだった。)


「ほほほ。さすがは、左大将殿。そのような女人が、いらっしゃるのでは?」
< 325 / 370 >

この作品をシェア

pagetop