桜の下で会いましょう
咲哉が死んで、子がいない間に、未亡人になった桃花。

母が死んで、ただ一人新しい家に来た隼也。

心の寂しさは、二人一緒だった。

だから、惹かれ合ったのかもしれない。

夫婦になる事を許された時は、二人共嬉しくて仕方がなかった。

想い合う相手と、一緒になれたからだ。


そこへ、父の藤原照明がやってきた。

「喜んでおるのは、そなただけではないぞ。」

照明は、隼也の隣に座った。

「ようやった。男であれば、関白左大臣家の跡取りだ。」

「まだ、気が早うございます、父上様。」

この家に、久しぶりに笑顔が、戻って来た。

だが、不吉の予兆は、確実に忍び寄ってきていた。


「うっ……」

父の藤原照明が、胸を押さえたのだ。

「父上様?如何されました?」

「いや、心配するでない。」

そう言った父の顔色が、青白くなっているのを、隼也は見逃さなかった。

「どこか、具合でも悪いのでは?」
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