桜の下で会いましょう
帝である桜の君は、もう一度敷地の中を、探させた。


「もう一度って、姫様を何を考えてんだぁ?」

「姫様でねえ。もっと上の人からの、頼みだ。」

「それって、この家に何かいけない事でも、起こっているのけぇ?」

使用人達は言われた通りに、土の中や人が近づかない場所を探したが、何もない。

「よし!最後に、天井の裏でも見てみるべ。」

佐島が最後だと言って探させたのは、母屋、つまり主人である父・藤原照明が住まう場所の、天井裏だった。

「うへぇ。蜘蛛の巣が張ってらぁ。」

ネズミもちょろちょろと、そこいらを走っている。

「こんなところに、何もあるわけねぇ。」

召使が根をあげて、降りてきたところだった。


「ちょっと、待てぇ。」

佐島が何かを見つけて、梯子を上った。

天井裏の、ちょうど奥に、何か白い物を見つけたのだ。

「何だ、これは。」

佐島はそれを手に取って、目を大きくした。
< 331 / 370 >

この作品をシェア

pagetop