桜の下で会いましょう
「うへぇえ!こ、これは!」

佐島は身を震わせながら、梯子を降りて来た。

「これは、旦那様には見せられねぇ。」

手を震わせながら、懐にそれを入れた時だった。


「どうした?何があった?佐島。」

関白左大臣である藤原照明に、見つかってしまった。

「いえ、何も……」

佐島は体を震わせながら、何もなかったかのように言った。

藤原照明と一緒にいた隼也は、勘が働いた。

きっと、父上様の具合と関係がある物だと。


隼也は庭に降り、佐島の目の前に来た。

「佐島。私に、見せてはくれぬか?」

「若様!?」

「父上様には、見せぬ故。」

佐島と隼矢は、しばらく見つめ合った。


根負けして佐島は、胸の中に入れたあれを、そっと隼也に差し出した。

「これは!」

手に取った隼也も、手が震えて思わず下に落としてしまった。

「隼也?」

藤原照明も、これには驚いて庭に降りる。
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