桜の下で会いましょう
「実は、以前私が迎えていた女御に、同じような事があったのだ。」

「ええっ!?女御様に?」


時の帝の女御に、呪いの護符を送り付けるとは、前代未聞である。


「但し、藤壺はもうそのような力は、持ち合わせていない。だとしたら、別な者がやったかもしれぬ。」

依楼葉は、また大きな力に飲み込まれそうで、背中に寒気を感じた。

「大丈夫だ。そなたは、私が守ってみせる。」

「主上……」


依楼葉と帝は、もう何があっても、揺るがない信頼を築いていた。


「和歌の尚侍。」

「はい。」

帝は御簾を出ると、依楼葉の前に座り、その手を取った。

「まだ、私の元へ入内してはくれないのだろうか。」

「えっ……」

依楼葉と帝である桜の君は、見つめ合った。


「あの……」

依楼葉は、困った顔をしてばかりだ。

「いや、困らせるつもりはないのだ。申し訳なかった。」

春の君は、立ち上がるとまた御簾納の奥に、消えてしまった。
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