桜の下で会いましょう
「それとも。」

帝は、依楼葉に顔を近づけた。

「私と尚侍が、力を合わせたと言う話にしておいた方が、よかったかな。」

依楼葉は、カァッと顔を赤くした。

「ははは。嘘だ。尚侍は面白い。」

そう言って帝は笑っていたが、依楼葉の胸の中は、ドキドキがしばらく止まらなかった。


一方、この話を聞いた夏の右大将・橘厚弘は、目を細めた。

「ほう、和歌の尚侍が、そのような事を。」

今迄の尚侍は、ただ黙って帝に仕えていただけ。

しかも内心は、入内を虎視眈々と狙っているような、腹黒い女ばかりだったと言うのに。

関白左大臣家を守ると言うことは、延いては帝を守ると言うこと。

それをひらりとやってのける、大胆さ。

そして帝を慕っている様子だと言うのに、入内など恐れ多いと一歩引いた謙虚さ。


「気に入った。」

橘厚弘の中で依楼葉は、一気に存在が大きくなっていた。
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