桜の下で会いましょう
「ある!あなたを恋しいと思うているのだ。入内しないのであれば、私のものになるがいい!」

依楼葉は、横を向いた。

そんな事言われても、絶対気持ちには応じないと言う、心の現れだった。


「そこまで私を無視するなら、強引にでも我がものにするだけだ。」

急に顔を近づける橘厚弘に、依楼葉は足蹴りをした。

「うっ!」

油断していた厚弘は、体が依楼葉から離れた。

「冗談にも、程があります!」

「冗談ではない!あなたが恋しいと、言うたではないか。」

「それなら、このような強引な仕打ち、酷すぎます!」

依楼葉が逃げようとすると、厚弘は手を伸ばした。

だが依楼葉も、その手を絶妙な場所で振り払う。

女にしては、手慣れている。


「尚侍。それ以上暴れては、女として気品をそがれましょう。」

「強引にあなたのものにされるよりも、ましと言うものです。」
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