桜の下で会いましょう
尚も厚弘は、依楼葉の腕を掴もうとするが、逆に依楼葉に腕をとられてしまう。

「女だと思って、手加減をすれば!」

厚弘は腕をするりと外すと、依楼葉を立たせたまま、抱きしめた。

「夏の右大将様……」

「逃がすものか。やっと、近づけたのだ。」

厚弘は情熱的に、依楼葉を見つけた。


帝である桜の君は、どちらかと言うと、柔らかな眼差しで見つめ合う。

こんな熱を帯びた目は、一度もなかった。

その熱に負けて、依楼葉はその場にしゃがみ込んでしまう。


「許してくれ。あなたに恋してしまった、憐れな私を。」

厚弘が再び依楼葉を床に寝せると、依楼葉は横に転がった。

「和歌の君!」

厚弘が手を伸ばすと、依楼葉の衣に手が触れた。

「お待ちください!」

手を引くと、依楼葉の白い肩が、顕わになった。


「えっ?」

そこには、矢が刺さった痕があった。

慌てて肩を隠す依楼葉。
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