桜の下で会いましょう
第19章 肩の傷
夏の君・橘厚弘は、依楼葉の壺を訪れた時から、あの肩の傷が忘れられない。
あの傷は何なのか。
本当に、春の中納言殿と同一人物なのか。
悩みは尽きなかった。
そんな息子を見て、橘文弘は息子の部屋を訪れた。
「どうしたと言うのだ。最近、悩ましい顔ばかりしている。」
文弘にしてみれば、息子が悩んでいる事に、心配しているだけだった。
「いえ、何も……」
だが厚弘は、口を堅く閉ざし、何があったか語ろうともしない。
「さては、恋の事か?」
文弘は、息子の肩を叩いた。
「なに、よいのだ。今まで橘の君、一人だった事が不思議なくらいだ。で?相手は誰だ?」
厚弘は、ゴクンと息を飲んだ。
「……誰もおりません。」
「嘘を言うな。そなたの顔を見れば、恋をしている事は分かる。」
言ってしまおうか。
厚弘は、口を開けた。
あの傷は何なのか。
本当に、春の中納言殿と同一人物なのか。
悩みは尽きなかった。
そんな息子を見て、橘文弘は息子の部屋を訪れた。
「どうしたと言うのだ。最近、悩ましい顔ばかりしている。」
文弘にしてみれば、息子が悩んでいる事に、心配しているだけだった。
「いえ、何も……」
だが厚弘は、口を堅く閉ざし、何があったか語ろうともしない。
「さては、恋の事か?」
文弘は、息子の肩を叩いた。
「なに、よいのだ。今まで橘の君、一人だった事が不思議なくらいだ。で?相手は誰だ?」
厚弘は、ゴクンと息を飲んだ。
「……誰もおりません。」
「嘘を言うな。そなたの顔を見れば、恋をしている事は分かる。」
言ってしまおうか。
厚弘は、口を開けた。