桜の下で会いましょう
「父上様。同じ人物が、ある時は男に、ある時は女になる事はあるのでしょうか。」

「ええ?」

橘文弘は、ポカンとしている。

「そうですよね。普通はある訳がないですよね。」

そう言って厚弘が、立ち上がろうとした時だ。

「まあ、待て。」

父である文弘が止めた。


「そなたがそう言うと言う事は、何か根拠があって事だろう。話してみなさい。」

厚弘は、またその場に座った。

「……実は、尚侍の壺を訪れまして……」

「な、尚侍の壺!?」

文弘は扇を広げると、周りに誰かいないか、確認した。

「それで!?」

「押したのですが、断られました。」

「はぁぁぁ……」

文弘は、大きなため息をつくと、扇で仰ぎ始めた。


「何とも、良かったのか悪かったのか。」

尚侍に手を付けたとあれば、正式に結婚しなければならぬと思っていた文弘は、とりあえず安心した。

「ですが、肩に……」

「肩に!?」
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