桜の下で会いましょう
「そう言えば、そのような事があったな。」

「あの時の傷に、とても似ているのです。」

文弘は、目を大きく見開いた。

「そう言う私も、じっくり見た訳ではないのですが、どうも春の中納言殿と傷がそっくりなのです。父上様。いくら双子の兄妹でも、全く同じ傷が、同じ場所にあると言うのは、おかしくはありませんか?そもそも、尚侍と春の中納言殿は、本当に双子の兄妹なのでしょうか。」

「……どういう事だ。」

「男女の双子は、心中の生まれ変わりだと、忌み嫌われております。左大臣家がそれを蔑ろにするとは、思えないのです。本当は別々に育てていた。ですが、途中で男子の方が、亡くなってしまったのでは?」

「なに!?」

「そこで双子の女子に、男子の真似をさせた。それが、春の中納言殿なのではないでしょうか?」

「馬鹿な!?」

厚弘の奇想天外な考えに、父・文弘は頭が真っ白になった。
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