桜の下で会いましょう
そして、ある日の午後。
橘文弘は、帝から呼ばれ清涼殿を訪れていた。
その脇には、息子である右大将・橘厚弘もいた。
「ご苦労であった、太政大臣殿。」
「主上の仰せとあらば、いつでも飛んで参ります。」
橘文弘と厚弘は、共に帝に頭を下げた。
ふと、橘文弘は帝の側に侍る、依楼葉を見つけた。
「そう言えばこの前、和歌の尚侍には、息子が大変失礼な事をした。」
帝と依楼葉は、揃って顔を上げた。
その張本人の厚弘は、依楼葉を見てニコッとしている。
「い、いえ……」
依楼葉は、あの時の事を思い出したくないと、厚弘とは反対の方向を向いた。
「失礼な事とは?」
帝が尋ねると、厚弘ではなく父の文弘が、代わって答えた。
「いえ、この阿呆が夜中間違えて、尚侍殿の部屋の中に入ってしまったようでございまして。」
帝の眉が、ピクッと上がった。
「夜中に……尚侍の部屋に……」
橘文弘は、帝から呼ばれ清涼殿を訪れていた。
その脇には、息子である右大将・橘厚弘もいた。
「ご苦労であった、太政大臣殿。」
「主上の仰せとあらば、いつでも飛んで参ります。」
橘文弘と厚弘は、共に帝に頭を下げた。
ふと、橘文弘は帝の側に侍る、依楼葉を見つけた。
「そう言えばこの前、和歌の尚侍には、息子が大変失礼な事をした。」
帝と依楼葉は、揃って顔を上げた。
その張本人の厚弘は、依楼葉を見てニコッとしている。
「い、いえ……」
依楼葉は、あの時の事を思い出したくないと、厚弘とは反対の方向を向いた。
「失礼な事とは?」
帝が尋ねると、厚弘ではなく父の文弘が、代わって答えた。
「いえ、この阿呆が夜中間違えて、尚侍殿の部屋の中に入ってしまったようでございまして。」
帝の眉が、ピクッと上がった。
「夜中に……尚侍の部屋に……」