桜の下で会いましょう
だがその事を言えば、依楼葉や左大臣家も、この太政大臣の手で、どうにかなってしまうだろう。

帝は、口を堅く閉じた。


依楼葉を助けたい。

だが、どうすればよいものか。


「さて、和歌の尚侍は、如何かな。」

依楼葉も、息をゴクンと飲みこむ。

「さあ、正直にお話された方が、よろしいのでは?春の中納言殿に成り代わって、主上を愚弄する真似をしたと。」

「そのような事は、しておりませぬ。」

「では、その肩の矢傷は、どう言い訳されるのか!」

「これは!子供の頃に転んでできたもので……」

「いくらお転婆な姫君であっても、矢が刺さったような傷が、転んだだけでつきましょうか!」

依楼葉は、袖で顔を隠した。


どうしたら良いものか。

これを逃れる方法は、ないのか。

それとも、太政大臣の思惑に引っ掛って、都を落ち延びる事しかもう、先はないのか。
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