桜の下で会いましょう
依楼葉は、胸に手を当てた。

「父上様は……思い悩むなと。」

「思い悩んで、如何する。自分が苦しむだけだろう。」

父の言葉を聞いて、腑に落ちる依楼葉。

「……初めての恋なのだろう?いっそ、楽しんではどうだ?」

「はい。」

そこには、もう自分の恋は実らないと、思い悩む姿の依楼葉はいなかった。


実るか実らないかは、まだ分からない。

あの出会いが運命ならば。

この先、いつかまた会える時が、来るかもしれない。


あの、桜の下で。


「そして、もう一つの事なのだが。」

「もう一つ?」

「男女の睦事の事よ。」

父は、周りに人がいない事を確かめると、依楼葉に一歩近づいた。

扇で耳元を隠し、そっと依楼葉に囁く。

「よいか、男女の睦事と言うのは……」

「……ええええええ!!!」

父の言葉は、何も知らない依楼葉にとって、相当衝撃的な事だった。

依楼葉は、口をあんぐりと開けたまま、固まってしまった。
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