桜の下で会いましょう
第4章 公達の正体は
双子の兄・藤原咲哉に扮する依楼葉の仕事は、中納言と言う、大臣の言葉を他の者に伝達する役目だ。

簡単なようだが、摂関家(摂政・関白)の子息しか、成る事はできない、大切なお役目だ。

父・藤原照明は、関白左大臣と言う、帝に代わって政治を行う偉い地位についていた。

本来であれば、参議に15年以上参加しなければ、中納言の位に就けないのだが、摂関の意向があれば、15年未満でも中納言の位に、就くことはできる。

藤原照明は、自分が関白になった途端、息子の藤原咲哉を、わずか20代前半で、中納言の位に引き上げてしまったのだ。

だからこそ依楼葉は、全く参議に参加していない身で、咲哉の代わりに中納言の仕事を、勤めなければならなかった。

だがそこは、仕える上司が父。

少しずつ仕事を教えて貰いながら、なんとか日々の職務をこなす毎日。

加えて他の大臣達も、参議の経験が浅い事も承知の上なのだから、失敗しそうになれば、それとなく助けたりしていた。
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