雨色のてるてるぼーず
家に戻ってからもおじさんがまだそこにいるのではないか、という恐怖から海へは行けなかった。




しかし、しかし海はどうしても見たかったため、海側にある非常階段へ行き、鉄格子の間から海を見た。



海は白と黒と青と緑を混ぜたような複雑な色をしていた。




風が強く吹き、大きな波しぶきをあげ、雷は轟音を鳴り響かせる。




今まで見たことの無い海だった。そしてそれとともに寒気がした。




もし、あそこでおじさんが止めてくれなければ、私は波にのまれて溺れ死んでいたかもしれない。




私はあのおじさんに救われた。そう思ったらいてもたってもいられず、おじさんと会った封鎖されている場所まで戻った。




しかしもうそこにはおじさんはいなかった。




子供ながらに私がしようとした事の重大さに気づき、私は恐怖と死なずに済んでよかったという思いから大声をあげて泣いた。







そしてそれから、晴れた日にしか海に行かなくなった。

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