運命だけを信じてる
デート当日。
小牧さんは都内で一番大きな遊園地に連れて行ってくれるという。遊園地近くの駅で待ち合わせをした。
約束の11時の20分前。
なんだか落ち着かなくて結局、早く来てしまった。彼に到着したと連絡するには早すぎるだろうと、どこか座れる場所かカフェを探していると、不意に肩を叩かれた。
「おはようございます」
「小牧さん!?」
七分袖の黒いテラードジャケットとデニムスキニー姿の彼は、遊園地のチケットをひらひらさせて立っていた。
「まだ約束の時間より早いですよ?」
「早く来過ぎたので、先にチケット買っときました。さ、行きましょう」
手を差し出される。
こんな嬉しいデートの始まりがあるだろうか。彼は態度に出さないけれど、チケット買うために早く来て並んでくれたのだろう。
「小牧さん、ありがとうございます」
大きな手をとる。
繋いだ手から伝わる温もりに、緊張よりも心地良さを感じた。