運命だけを信じてる

えっ。

東課長の発表が始まり、スライドの表紙から2ページ目に映った瞬間、違和感を覚えた。


「神田くん、これ、私が作った資料じゃないよ!」


「へぇ」


「どういうこと?」


思わず立ち上がり、椅子の背もたれに仰け反っている神田くんに大声を上げる。


「うるさい。途中でテーマが代わり、あなたの資料はダメになった。それだけのことでしょ」


席に戻った村井さんが答えた。


でも、待って。待って。


「これはーー」


言いかけて、押し止まった。

余計なことは言ってはいけない。



「あなたなにが言いたいの?黙って見なさい」


村井さんの言葉に神田くんがニヤつきながら私を見た。


「そーですよ、静かにして」


テーマが変わったことを1課のみんなは知っていたようで、2人以外も平然としていた。


だけど、背後を振り返った先で、3課のみんなが動揺の声を上げていた。



だって、これは。
この内容は!


ーー星崎課長に見せてもらった新商品と同じだった。


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