運命だけを信じてる

「すみません!聞いてください!」


全員に届くように、大声を張り上げる。


「前山!?」


驚いた表情の星崎課長の横に立ち、その手からマイクを奪う。


マイクが汗ばんでいた。

どれほど強い力で握って、自身の感情と戦っていたのだろう。


壇上に置かれたパソコンが目に入り、マウスを操作して声を上げる。


「こちらの資料を見てください!これは3課が用意した内容です。ご覧の通り、1課とほぼ同じ内容です!そして私は!この内容を、3課が先に作り上げていることを知っていました!つまり!」


「前山!止めろ!」


今まで見たこともない怖い表情で星崎課長は私からマイクを奪った。


止めない!

地声で張り上げる。


「3課の内容を1課が、盗んだのです!」


良かった、思ったより声が響いた。



「前山!」


会議室が静まり返る。


今度は星崎課長に口元を大きな手で覆われて、喋ることができなくなった。

でもいい。言いたいことは、言えたーー



「え?」



達成感にも似た感情が芽生えた時、


星崎課長の手が口から離れーー


そして、頰に痛みが走った。


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