運命だけを信じてる
2人で会議室を出て、そのまま会社を飛び出した。
私の腕を引き足早に歩く星崎課長がどこに向かっているかは分からなかったけれど、聞くことが怖かった。
どうしよう、一生、口を利いて貰えなかったら。
辛い。
この人に見捨てられることは他のどんなことよりも痛い。
10分くらい無言で歩いた後、大きな公園に辿り着いた。
水飲み場の蛇口をひねり、綺麗に畳まれたハンカチが濡れる様子をじっと見ていた。
「ごめんな」
振り返った星崎課長が、私の頰にハンカチを当ててくれた。
その目が、ひどく哀しそうに映る。
ああ、私がしたことは間違っていたんだ。
あなたにそんな哀しい顔をして欲しいわけじゃなかったのに。
「ごめんなさい…」
ごめんなさい、ごめんなさい。
あなたがじっと耐えたことを、私が台無しにしたんだ。