運命だけを信じてる
顔色を変えず、小牧さんは首を振った。
「…僕は父のようになりたくないです。このまま他に好きな人がいるあなたを束縛して、あまつさえ結婚できたとして、僕たちは幸せになれますか?僕はただ一時だけ、甘い蜜を吸いたかっただけです。だからーーもう終わりにさせて」
強引に始まって、無理矢理に終わらされる。
最後まで小牧さんのペースだね。
「ーー終わりにします。私は、大企業のご子息と吊り合えるほどの女ではないので」
小牧さんが一番、言われたら嫌であろう言葉が飛び出した。
でも謝らないわ!
素早くパソコンの電源を落として席を立つ。
「お先に失礼します。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
彼の返事はいつも通りで、拍子抜けだ。
感情的になっているのは私だけか。
悲しい気持ちを抱えてオフィスを後にした。