運命だけを信じてる

今まで散々、逢瀬先輩に気持ちを吐露してきたから、そんな私のためにひと肌脱いでやろうと思ったのだろう。なんだかんだ文句を言って、面倒見のいい人だから。


「あ、やば。明日までの資料、忘れてました」


「資料?」


ピザを早々に3ピース以上平らげたと思ったら、逢瀬先輩は突然、立ち上がった。



「はい。戻ってすぐにやります!2人はどうぞ食事を続けてください」


「なんの資料だ?って、…おい、」


星崎課長の言葉の途中で駆け出した逢瀬先輩はすぐにお店から出て行ってしまった。


「いったいなんなんだ…前山、知ってるか?」


「さぁ…」


知ってるもなにも席を立つ口実です。
雑すぎますけど!


「よく分からない奴だ。そして食い逃げだ」


「そうですね…」


やばい、緊張してきた!

言った方が良いんだよね?


「前山、好きなの頼んで」


「ありがとうございます」


メニューを持つ手が少しだけ震えた。


どうしよう。


今日まで溜めた想いを伝えられる機会であることには違いないし、いい加減、スッキリさせたいとは思うけれど。

伝えてどうするのだろう?
付き合ってくださいとお願いする?


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