運命だけを信じてる

ほんの少しだけ肌寒い夜道をゆっくり歩く。

私は飲み過ぎたかな。


駅まで10分程だ。
歩いているうちに酔いが覚めるといいな。


「なぁ、前山」

「はい」


私に歩調を合わせて隣りを歩いてくれていた星崎課長が足を止めた。


「俺がしたこと、男として最低だと思うか?」


「どうして最初から…飛鳥さんの気持ちを断らなかったのですか。婚約までして…」


「仕事面で彼女には色々と助けてもらったから、気持ちに応えたいと思ったんだ。でも……最後の最後で、自分の気持ちを…優先したいと思った。小牧は悪者になって、俺を後押ししてくれたんだ」


星崎課長の気持ち?

確かに、自分の気持ちに正直に生きた方が幸せだ。

でも。
あと一歩で幸せを掴めたはずの飛鳥さんの絶望を考えたら、痛い。

それは裏切りだ。



「前山、」


お酒のせいか星崎課長の瞳は少し潤んでいる。

色気が溢れてます…。




「俺は前山が、好きだ」




は?

彼に見惚れていた私は驚きのあまり、声が出なかった。


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