運命だけを信じてる
管理課の扉を開けると、一斉に視線が集まる。みんな新入社員の登場を心待ちにしていたのだ。
好奇心に満ちた複数の視線が、私の後ろに控える小牧さんを捕らえる。
そしてあっという間に彼は囲まれた。
10人ちょっとという社内では少ない人数の部署ではあるけれど、全員が一箇所に集まると窮屈だ。
「小牧くん、宜しくね」
「分からないことがあったら、なんでも聞いてね」
「席はこっちだよ!」
ベテラン社員が多く在籍する管理課で若手の新入りは珍しいのだ。
用意された席へ案内されていく小牧さんを横目に一息つく。元々教育係なんていうガラではないし、みんなに任せておこう。
会社のことを説明し始めた社員たちの話に耳を傾ける小牧さんの隣りに座る。
私と彼の席は隣り同士なのです。
「お砂糖とミルクは必要ですか?」
1時間ほど彼の周りに戯れていた社員たちがそれぞれの仕事へ戻っていった頃合いを見計らって珈琲を淹れた。
「ありがとうございます。両方頂きます」
甘党なのかな。
私もミルクをたっぷり入れた珈琲に口つけた。