運命だけを信じてる
珈琲を飲みながら言う。
「私が小牧さんのOJTを担当します。こういうの慣れてなくて、至らない点ばかりだと思うけど宜しくお願いします」
オン・ザ・ジョブ・トレーニング。
私は一通りの仕事を小牧さんに教えなければならない。彼が一人前になるための手助けを任されたのだけれど、こんな私に務まるのだろうか。
自信がないし、本音を言えば憂鬱だ。
「分からない時は遠慮なく聞いてください。私の説明が悪いだけなので…」
「ありがとうございます」
「それじゃぁ早速、始めます。メールの使い方は…」
事の発端は先週の金曜日。
大好きな上司から、
"前山さんにしか頼めないことがある"
そう会議室に呼び出された。
胸を馳せて話を聞いた結果、入社7年目にして初めて新入社員の教育係に任命されてしまった。
私にしか頼めないこと?
教育係を押し付けられただけのことだ。
落胆した心を隠して「分かりました」と笑顔で答えてしまい、後悔しています。
ああ、断れば良かったな…